ファビオピサカーネの話

 

サッカー選手に救われる。恥ずかしいけれど、俺にはそんな時がある。日々の生活の中でクソがクソがと思うことが溜まって頭が爆発しそうな時に彼らはガスを抜いてくれる。どんな美談にも励ましの言葉にも真顔で立ち向かっていけるくらいに俺の性格はひねくれているけれども、大好きなサッカーをする彼らの姿に涙を流しそうになることがある。そんな「彼ら」の1人にファビオ・ピサカーネというイタリア人がいる。彼のバックグラウンドを知らずにプレーを見るのはあまりにもったいないと思うから、ここに書いておこうと思う。少しでも誰かに知っておいて欲しいし、何かほんの少しでも誰かの救いになればいいと思う。

 

ピサカーネは現在カリアリでプレーをするイタリア人ディフェンダー。もう31歳で身長は178cmとセンターバックにしては小柄なほう。一般にはベテランと呼ばれる年齢だけど、毎試合ルーキーのように闘志溢れるプレーでカリアリサポーターの心を掴んでいる。もちろんプレーも魅力があるのだけど、ピサカーネの本当の魅力はそのバックグラウンドにある。しかし何から手をつけていいか迷ってしまうな。そのくらい魅力に溢れる選手なんですよ。ほんまに。

とりあえず最初に彼の病気について紹介したいと思う。ピサカーネはジェノアユースの選手だった時代にギランバレー症候群を患った。四肢が麻痺して動かしづらくなる病気で、予後があまり良くないことでも知られている。その多くが大人になってから発症すると言われるこのギランバレー症候群を、彼は14歳で背負った。二度とサッカーができなくなるかもしれない。とまで言われ、一時は歩くこともままならない状態だったらしい。

闘病生活の末、ピサカーネはサッカーの舞台に戻ってきた。が、きたものの、セリエの下部リーグでの生活が続いた。しかし地道にプレーし続け、イタリアの代表合宿に呼ばれたりなんかもしながら評価を上げ続けた。そして2015年、当時セリエBであったカリアリと契約を結んだ。ピサカーネにとってカリアリ1年目となるこの年で、カリアリセリエAに昇格した。もちろんピサカーネもその躍進の大きな柱になっている。 2016年、当時30歳だった彼はセリエAデビューを果たした。結果はアタランタを相手に3-0で勝利。試合後のインタビューで彼は涙を堪えられなかった。

ここまででも十分彼の魅力が伝わっていると思うのだけど、もう1つ紹介したいエピソードがある。それは彼がイタリア代表合宿に呼ばれた時のこと。ピサカーネはシモーネ・ファリーナという選手と共にイタリア4大マフィアの1つであるカモッラのボスに八百長を打診されたのだが、それを断りすぐに通報した。当時賭博に侵食されていたイタリアサッカー界の信頼を取り戻すという意味でも、信じられないくらいの覚悟と勇気を持った行動だと思う。

後にピサカーネはガーディアン紙が選出するフットーボーラーオブザイヤーの初代受賞者となった。

 

とまあこんな感じでピサカーネへの愛と彼の魅力を書き殴ってみたわけだけれども。努力が大事とか、諦めない心を持てとか、全くそんな話ではござーせん。ただピサカーネはサッカーがサッカー以上の存在である、ということの体現者なのだと思う。サッカーには言葉にしようとするとそれだけ薄っぺらくなってしまう美しさがあって、それをピサカーネから感じてくれたらと思うのです。

まあ言ってしまえば、サッカーって最高だな。って話なんすけど。

 

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