ジェンクトスンは最後のピースとなるか

 

 

これを読んでいただいている皆さんの一部は、ある疑問を抱えていると思う。あの男は「シェンク」なのか「ジェンク」なのかと。結果から言えば日本語表記ではおそらくジェンクが正しい。彼がルーツを持つドイツではcをツェと発音するが、現在代表でも活躍しているトルコではcをジェと発音する。何よりこの耳で聞いた現地のリポーターや実況は確かに「ジェンク」と言っていた。

 

 

発音を確認したところで本題に入りたい。

ルカクが青から赤に衣替えをしてからというもの、エバートンはストライカーの不在に頭を痛めてきた。本来ならばサンドロラミレスあたりに背負ってもらいたい仕事なのだが、いまいちクオリティを欠き、カルバートルウィンやルーニーで誤魔化しながら半シーズンを過ごした。アラダイス就任後は上昇気流に乗ったものの、やはりビッグ6を引きずり下ろすには、トスンと前で構えてくれるストライカーが欲しかった。そこで白羽の矢が向かった先が、トルコのストライカー、ジェンクトスンであった。

 

彼を一言で表すと、何でもできるストライカーだ。線がしっかりとしていてシュートに力があり、前から降りてきて組み立てもできれば、ポストとして周りを活かすこともできる。さらに183cmと際立って高さがあるわけではないにも関わらず、空中戦にもめっぽう強い。年齢は26歳と若くはないが、その分落ち着きがあり、即戦力として計算できるため、冬の補強としては賢明だ。ベシクタシュでは96試合で41ゴールを決めており、CLでもクラブ初のベスト16進出の柱となっていた。さすがに貪欲なベシクタシュサポーターを満足させていただけのことはある。

 

 

ここまででジェンクトスンがいかに期待を持てる選手かということがわかってもらえたと思うが、エバートンではどのようにチームに組み込まれるだろうか。月並みの意見ではあるが、うまくフィットすれば現状戦力より大幅な得点増が見込まれる上、攻撃のバリエーションも増えるだろう。

まずこれまで前線でボールキープを押し付けられていたカルバートルウィンの負担が減るだろう。ジェンクトスンに競らせて一気にロングカウンターという手もある。クロスを入れてジェンクトスンが頭で押し込むという手も考えられるが、これまで彼はクアレスマらの力を借りていたことも事実であるため、どれだけエバートンで空中戦からの得点を保証できるかはわからない。引いた相手には彼が降りてきてポストを担い、ルーニーやトムデイビスの飛び出しを促進させることもできるだろう。

プレーにおいてはこれと言って問題が見えないジェンクトスンであるが、一つ問題を挙げるとすれば、生活面だろうか。先日のFoot!粕谷秀樹さんも触れていたが、トルコとイングランドでは全く文化が異なる。冬の移籍とあって準備期間も短いため、言語をはじめとしたあらゆる文化的課題に取り組む程の余裕はないだろう。幸い彼はドイツにルーツを持っているため、ドイツ語でのコミュニケーションは取れるはずだ。

 

 

ここまでエバートンでのジェンクトスンの役割と課題を挙げてみたが、一つ言えるのは、彼のクオリティは確かなものであり、ルカクの残り香をスッキリ消臭できるだけの実力と実績を持っているということだ。私としても好きな選手の1人であるため、これからも注目していくと同時に、さらなる活躍を願う。

彼はエバトニアンが待ち望んだ、最後のピースとなれるか。